うちの子は室内飼いだから大丈夫? 猫のフィラリア予防、意外と知らない落とし穴
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「うちは完全室内飼いだから、フィラリアは関係ないよね」
診察室でこう話してくださる飼い主さん、実はとても多いんです。
お気持ちは痛いほどよく分かりますが、獣医師の立場から結論を申し上げますと「完全室内飼いであっても、猫のフィラリア予防は必要」だと考えています。
この記事では、猫の飼い主さんが予防をためらいがちな2大理由
① 室内飼育だから不要
② 投薬がたいへん
に対し、現場の獣医師としての率直な思いと、今日からできる解決策をお伝えします。
猫もフィラリアに感染する。犬よりも怖い「隠れリスク」
フィラリアって、犬の病気じゃないの?
そう思っている方も多いと思いますが、実は猫もフィラリアに感染します。
犬のフィラリアは成虫が心臓に寄生してゆっくり症状が出てきますが、猫の場合はフィラリアの幼虫が肺の血管に到達した時点で強い炎症を起こすことがあります。それにより、突然咳が出たり、呼吸が苦しそうになったりします。
さらに厄介なのが、「感染しているのに症状がほとんど出ない」ケースも多いことです。症状が見られない子であっても,感染が進行することで徐々に肺や心臓に負担がかかり,ある日突然死亡してしまうこともあるのです。
そして最も知っていただきたいのが、猫のフィラリア症は診断が難しく,安全な治療法がないという事実です。
一般的には,感染してしまったら、症状を和らげながら経過を見ていくしかないというのが現状です。だからこそ、「かかってから治す」ではなく,「かからないようにする」ことがとても大事な病気なのです。
※注意:猫に犬用のフィラリア予防薬を使用すると、深刻な神経毒性が生じ、最悪の場合は死に至る危険性があります。必ず動物病院で処方された猫用の薬を使用してください。
「完全室内飼いだから大丈夫」という誤解
「でも室内だから蚊に刺されないよね」という話はよく伺いますが、ここが一番の誤解ポイントかもしれません。
少し想像してみてください。
夏の夕方、窓を開けていたときや、ベランダに出たほんの数分、洗濯物を取り込む一瞬、玄関のドアを開けた隙間などから蚊は侵入します。網戸の隙間や換気扇など、蚊が室内に侵入する経路は思った以上にたくさんあるのです。蚊は必ずしも「外に行かないと刺されない」虫ではありません。
「うちは絶対に外に出さないから」という事実があっても、蚊を完全にシャットアウトするのはなかなか難しいものです。実際に、完全室内飼いの猫がフィラリアに感染したケースも数多く報告されています。
だからこそ、当院では室内飼いの猫ちゃんでも予防をお勧めしているのです。
「薬をつけるのがたいへん」を解決するコツ
「薬をつけるのがたいへんで...」という飼い主さんの正直な気持ち、すごくわかります。
猫ちゃんの首元に薬を垂らそうとしたら嫌がって逃げたり、なんとか捕まえてもすぐ動いて薬が毛についてしまったりという経験をされた方は多いはずです。
実は「たいへんだから予防をやめた」という理由も診察でよく耳にしますが、それで感染してしまった子を見るたびに、もう少しだけ続けてもらえたらと思うことがあります。ここで、薬を嫌がる猫ちゃんへのちょっとしたヒントをお伝えします。
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タイミングを工夫する:食後のまったりしているときや、深く眠っているときなど、緊張していないタイミングを狙うと、すんなりできることがあります。
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首元の毛をかき分けて皮膚に直接:毛の上から垂らしても効果が薄くなることがあるため、皮膚に直接触れるようにしっかり毛をかき分けてから投与します。
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終わったらすぐ褒める・おやつをあげる:「この作業のあとにいいことがある」と覚えてもらうと、だんだん慣れてくる子もいます。
どうしても難しければ、お気軽に当院スタッフまでご相談ください!
次の来院時に、一言だけ声をかけてください
当院のある愛知県では、フィラリアの予防は(2026年現在)4月から12月の年9回の予防を薦めています。
まだ始めていない方は、ぜひ次の診察のときに一言声をかけてみてください。「室内飼いだけど、念のため相談したくて」で全然大丈夫です。
大切な家族の一員であるその子の健康を、一緒に守っていきましょう。